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Spike Studio
インタビュー

【後編】三井住友DSアセットマネジメント×スパイクスタジオ|開発未経験の現場社員3名が、業務を変える人材に

スパイクスタジオが三井住友DSアセットマネジメント株式会社様にご提供した、9か月間の伴走型デジタル人材育成プログラム。担い手として選ばれたのは、IT部門ではなく、ミドル・バック業務の中核を担う現場のメンバー3名でした。

【前編】では、「同じ人数で業務を回せる構造をつくることが至上命題だった」という土屋氏の問題意識から、3名がそれぞれ抱えていた業務課題、そして「何かしてしまったのか」というアサイン当初の受け止めまでをお伺いしました。

第3フェーズに入り、3名は自ら手を動かし始めます。しかし、範囲の切り方に迷い、設計をやり直し、同じことを何時間繰り返しても進まない時期がありました。

【後編】は、そこから先の話です。3名の転換点と、実際につくられた3つの仕組み、そして組織に起きた変化をお伺いしました。

【クライアントプロフィール】

  • 企業名:三井住友DSアセットマネジメント株式会社
  • 事業内容:(1)投資運用業に係る業務/(2)投資助言・代理業に係る業務/(3)第二種金融商品取引業に係る業務

インタビュー参加者

  • 土屋裕子氏 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 常務執行役員 オペレーション&テクノロジー部門長
  • 山本直史氏 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 オペレーション企画部
  • 置鮎遵子氏 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 資産管理部投信管理チーム
  • 荒居美穂氏 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 クライアントレポーティング部第二チーム
  • 角田和美氏 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 投信ドキュメンテーション部
  • 多鹿秀一 スパイクスタジオ 執行役VP/COS/ビジネス開発ユニット ディレクター

【導入サービス】

  • サービス名:DX伴走支援/AI人材育成
  • 導入の目的:ミドル・バック業務のデジタル化を主導する人材の育成/現場発の業務改善の実現
  • 期間:約9か月間

【事例のポイント】

  • 販売会社からの照会対応にかかる時間が1件あたり約1時間から10分程度に短縮。加えて、生成AIがナレッジを参照して文案を作成することで、回答品質の向上にもつながった。
  • 約214本のファンドを扱うチームで、データ受領・保存業務を自動化。ファンドごとにばらばらだった保存ルールの統一も進み、担当者依存からの脱却が進行中。
  • 成果物はいずれも現在も運用中。「つくること」と「運用すること」は別の難しさがあり、事務局・IT部門が相談先として機能する体制が定着の条件となる。

3人は、どこで変わったのか

進まない時間を抜けた先で、3人それぞれに見え方が変わる瞬間がありました。

「最後のほうは、楽しいと感じられました」

置鮎氏私はアイデアは出せても実装は苦手なタイプでした。最初は言われるままに動くこともありましたが、次第に勘所がつかめて、「なぜこのやり方なのか」が分かるようになりました。最後のほうは、楽しいと感じられました。

「1〜2本動けばいい」ではなかった

荒居氏普段は完成したシステムやツールを使う立場だったので、条件分岐やエラー処理まで考えて、フローをゼロから設計することは初めてでした。開発は想像以上に複雑でした。

開発では、最初から大きく作るのではなく、小さく作って小さくテストするようにと助言を受けました。その進め方に変えると、開発はうまく進むようになりました。

ただ、サンプルとして1〜2本のファンドで動けばよいだけではなくて、将来、多数のファンドに展開できる汎用的な仕組みにする必要がありました。その場しのぎにせず、将来の運用を意識して設計しました。結果として、数100ファンドの自動保存を正確に行うことを想定して作成を進めると想像以上に複雑な仕組みが必要になりましたが、後から誰が見ても分かりやすく、修正・改良などもしやすいような作りにすることを意識して作成を進めるよう心がけました。最後には、各アクションが何を起こすのかが分かるようになって、開発を楽しいと感じられました。

「なぜそうなのか」と何度も問われて、気づいたこと

角田氏私は「こうしたい」という前提で話しがちでしたが、「なぜそうなのか」と何度も問いかけていただきました。その問いによって、自分が会社の従来のやり方に引っ張られて考えていたことに気づいて、新しい視点を得られました。

また、週1回のサポートで課題がすぐに解消される様子を見ながら、AIにどう聞くとどのような回答が返るか、質問の仕方によって回答が変わることを体感しました。最後には、完全ではないものの、目的に近い回答をAIから引き出せるようになった感覚があります。

「言われるままに動く」から「なぜこのやり方なのかが分かる」へ。「使う立場」から「将来の展開を見据えて設計する立場」へ。3名それぞれに、途中で見え方が変わる瞬間がありました。

ツールをつくること以上に、難しかったこと

自分の業務を変えるには、関係者を動かす必要があります。3人が直面したのは、技術以外の壁でした。

「関係者を取りまとめるのは、初めてに近い経験でした」

置鮎氏このプロジェクト以前は、関係者を取りまとめて進める経験はほとんどありませんでした。今回が初めてに近い経験です。

ツールに詳しくなくても、人は巻き込める

多鹿ツールの詳細な知識がなくても、実現したいことのために必要な人を巻き込んで、IT部門とコミュニケーションを取ることはできます。荒居氏は、当初想定していなかったツールの利用可能性を確認するため、IT部門や関係者との会議を設定して、トライアル利用の検討まで主導されました。

3人が一緒に準備している姿を見たとき

多鹿組織の業務は、部署ごとに前工程・後工程として連携することが多くて、横のつながりは生まれにくい面があります。最終報告会の日に、3人が一緒に準備している姿を見たとき、横のつながりができていることをうれしく感じました。

最終報告会では、役員の前で1人30分程度ずつ、自分でつくった資料を用いて発表されました。役員からも良い発表だったという評価を受けています。デジタルスキルだけでなく、資料作成やプレゼンテーションのスキルも伸びたと感じています。

9か月で、3人は何をつくったのか

3人がつくった成果物は、いずれも今も運用されています。ひとつずつお伺いしました。

置鮎氏|照会対応アプリ ── 1時間から10分へ

置鮎氏受信した問い合わせ内容をSharePointに保存して、Power Apps上で表示します。別のSharePointに蓄積した対応ナレッジをもとに、AIが回答ドラフトを作成します。

利用者はアプリを開くと返信例を確認できます。AIの回答には誤りの可能性もあるので、根拠となるナレッジもアプリ上に表示されます。根拠と回答ドラフトを照合して、問題がなければ「メール作成」ボタンを押してOutlookの下書きに保存する仕組みです。

時間としては、1時間かかっていた作業を10分程度にできました。それ以上に、販売会社様への回答の質が向上したと感じています。AIはナレッジデータベースを参照して、質問に対する直接の答えだけでなく、「追加で必要だろう」と考えられる情報まで盛り込んだ文案を作成します。

その内容を確認して送ることで、販売会社様への回答がより丁寧でわかりやすく、質の高いものになったと感じています。

アプリで作成したメールを見た上司やメンバーから、「アプリを使って回答したのですか」と聞かれました。これまで自分が送ったことのないような高品質な内容だったからだと思います。もう一人の担当者からも、「早い」と評価されました。反応が良くて、つくってよかったと感じています。

荒居氏|自動保存により、1ファンドあたり約2〜3分程度の作業削減

荒居氏外部委託先から受領するメールと添付ファイルを保存するワークフローを、いくつかのファンドで運用しています。受信メールの件名や添付ファイル名をもとに対象ファンドを判定して、SharePointと社内ローカルドライブへ自動保存され、Teamsへ通知される仕組みです。

メールと添付ファイルを自動保存することで、手作業で保存していたときには気づきにくかった訂正再送などにも気づきやすくなりました。定型的な保存業務を減らせただけでなく、ファンドごとにばらばらだったフォルダ構成・保存ルールを統一することも進められました。担当者ごとのやり方に依存しない仕組みづくりにつながったと考えています。現在は担当ファンド以外についても、チームメンバーから対象リストへ追加してもらっていて、状況を見ながら対象を拡大していく予定です。

外部委託先データの一元管理については、データの保存場所を社内で検討中なので、まだテスト段階ですが、自動保存した添付ファイルから必要なデータを抽出・整形し、データの整合性を確認したうえでSharePointに自動格納する仕組みを作成しました。今後はデータベースを何でもつかだけでなく、テーブルや項目のデータ設計も検討する必要があります。

角田氏|「ここに行けば情報がある」

角田氏3月時点で2つのツールをつくりました。そのうちのSharePointで作成した情報一元管理の仕組みを、Power Appsのアプリから更新する形で、現在、部署内で運用しています。

今回の一番の目的だった情報の一元管理は、ある程度形にできたと考えています。見る場所が変わっただけとも言えますが、「ここに行けば情報がある」と分かりやすくなりました。ほかのファンドの情報も同様に調べられるので、ファンド間の比較もしやすくなりました。目論見書の改訂作業だけでなく、ほかの検討を行う際にも使えるようになったと思います。

運用を始めて初めて分かったことも多くありました。全員で使おうとするとライセンスの関係で使えない、といった課題も発生しました。事務局やIT部門に相談しながら確認を進めて、ようやく全員で利用できるようになりました。つくることだけでなく、運用することにも別の難しさがあって、IT部門の仕事への理解も深まりました。

「つくること」と「運用すること」は、別の難しさを持っている。市民開発を組織に広げようとするとき、おそらく最も重要な気づきのひとつだと思います。

残ったのは、デジタルスキルだけではなかった

置鮎氏アプリの使い勝手や見た目、業務フローをどう変えるかについて、自分で意思決定する経験を得ました。「これを変える」と決断することが、これまでにはほとんどなかった経験でした。

荒居氏課題整理と意思決定の考え方を学べたことが大きいです。単純に自動化するだけではなくて、本質的な課題がどこにあるかを考えることは難しい一方で、非常に重要だと感じました。

たとえば外部委託先から受領するデータには誤りが多くて、後工程のチェックで見つけて修正依頼・再作成を繰り返すことがありました。データを格納する前に整合性を確認する仕組みを入れる選択肢もあります。すべてを自動化すればよいわけではなくて、品質や運用面も踏まえて意思決定することの重要性を学びました。

また、普段は関わりの少ない他部署の参加者とも相談して、励まし合いながら進められたことも良い経験でした。

角田氏これまで全く経験のなかった分野に挑戦できて、DXに対する心理的なハードルが下がりました。普段の業務も異なる他部署のメンバーと、同じ目標に向かって進める仲間ができたことも、これまでにない良い経験でした。

「以前の自分のような人から見ると、ちゃんとしたものに見える」

角田氏現在はDBなども触っているので、周囲から「詳しい人」のように見られることがあって、少し戸惑っています。自分では大したものをつくったとは思っていませんでしたが、以前の自分のように未経験の人から見ると、ちゃんとしたものに見えるのだと分かりました。

だからこそ、今年も改善を続けていきたいと思います。

これから、どんな人が必要になるのか

土屋氏これから必要なのは、与えられた業務を毎日正確にこなすだけではなく、自分たちの業務の何が問題か、誰を幸せにするために、限られた期間の中で何ができるかを真剣に考えて、業務を変えていける人です。3人はそれを体現してくれました。

業務を支える人から、業務を変える人へ。【前編】の冒頭で土屋氏が語られた「同じ人数で業務を回せる構造」への転換は、仕組みが3つ増えたことではなく、その転換を経験した人が3名生まれたことによって進みます。

「自分たちで回して、人材を増やすことが一番の恩返し」

土屋氏伴走してくださった皆様に感謝しています。現在は第2期生も始まっていますが、短期的な取り組みで終わらせず、自分たちで回して、このような人材を増やしていくことが一番の恩返しだと思います。

最後に、3人が語ったこと

9か月間を振り返って、率直な感想をお伺いしました。

置鮎氏9か月伴走していただいて、最終発表会を終えたときに「やり切れた」という経験を得られました。社会人として必要なスキルを多く学べ、この研修は自分の社会人人生のターニングポイントになったと思います。研修後はデジタルに関することやより主体性が求められる業務へのアサインなど、以前とは変化があると感じています。研修に集中することができたのは、事務局の皆さまやチームメンバーの支えのおかげです。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。

荒居氏長いようであっという間の期間でした。もっとやってみたい気持ちがある一方で、無事に最終報告まで終えられてほっとしています。

開発経験はありませんでしたが、適切なアドバイスをいただいて、形にすることができました。今回学んだことは、当該案件だけではなく今後の業務改善にも活かしていければと考えています。また、AIをもっと使いこなせるようにという助言を受けて、AIへの聞き方や活用の勘所も、少しずつ分かるようになりました。

進捗が遅れがちなときも、事務局の皆様やチームの皆様に業務量の調整などを適宜していただきました。貴重な案件に触れさせてもらえたことに感謝しています。

角田氏完成してよかったというのが一番の感想です。伴走支援では、質問すればすぐに答えていただけましたが、質問するまでの間は自分で考えなければなりません。それが伴走なのだと、終わってから思いました。そうでなければ、あそこまで必死に取り組まなかったかもしれません。

また、毎週の打ち合わせ設定、会議室の手配などを担ってくださった事務局の皆さんにも感謝しています。

編集後記|スパイクスタジオより

「質問すればすぐに答えていただけましたが、質問するまでの間は自分で考えなければなりません。それが伴走なのだと、終わってから思いました」

角田氏のこの言葉は、私たちにとっても取材の収穫でした。伴走支援は、答えを渡すことでも、放っておくことでもありません。考え切るまで待って、必要な瞬間に届ける。その距離の取り方が、9か月後の成果物と3人の変化を分けたのだと思います。

この9か月が順調だったわけではないことは、記事のとおりです。範囲を切れずに期限が迫り、設計を白紙に戻し、何時間繰り返しても進まない時期がありました。そのなかで私たちが最も時間をかけたのは、ツールの使い方を教えることではなく、期間内に到達できて、かつ効果の見込めるテーマを一緒に見極めることでした。ここを外すと、研修が終わっても成果物は残りません。

そして今回残ったものは、3つの仕組みだけではありませんでした。ツールはいずれ古くなります。けれど「自分たちの業務の何が問題かを考え、変えていける人」は、次の課題にも向き合えます。土屋氏が最初に下した「IT部門ではなく、現場に託す」という判断は、そこまで見据えたものでした。

三井住友DSアセットマネジメント様のプログラムは、すでに第2期に入っています。目指しているのは、外部の伴走に依存しない自走です。私たちの役割は、いずれ必要とされなくなることだと考えています。

どこから始めるか、一緒に決めませんか

DX人材の育成、業務プロセスの再設計、AIの実装。どこから着手すべきかが定まっていない段階でも構いません。現状をお聞きしたうえで、効果が出やすい業務の見極めからご一緒します。

スパイクスタジオは、指針の策定から人材育成、業務プロセスの再設計、システム実装までを、ひとつの流れでご支援しています。

【前編】三井住友DSアセットマネジメント×スパイクスタジオ|IT部門ではなく現場に託した、9か月の伴走型DX人材育成

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