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Spike Studio

SPIKE STUDIO VISION 2040

――最適解を知るのは、誰だ?――
次世代AIと共に、スパイクスタジオが創る未来

第1話 / 全4話

【目覚めのアルゴリズム】

【目覚めのアルゴリズム】

「おはようございます。燿子さん。起床時間です」

耳元でそう囁かれると同時に、朝の柔らかな日差しが頬に当たる。

私の生体リズムに完璧に同期した窓の生体調和採光フィルムが、最高の目覚めを演出していた。

誰もいないはずのキッチンからは、コーヒーの良い香りが漂ってくる。

透き通る明るい香りに、柑橘系の爽やかなノート。今日の私の体調とスケジュールに合わせ、カフェインとアロマ成分が絶妙に配合されている。

これを選んだのは<彼>だ。そして、その理由を、私は一番よく知っている。

「あーあ、流石に1時まで起きてたから、まだ眠いわ」

ベッドから起き上がりながらそう独りごちた私に、耳元でまた囁き声が聞こえた。

「昨日は特別な夜でしたからね、仕事を頑張るためには、息抜きも必要です」

推しのバーチャルLiveを見たあとに興奮冷めやらず、深夜までSNSクルーズに勤しんだ私に、<彼>は何の忠告もしなかった。代わりにこうして完璧な朝を準備してくれたのだ。

<彼>は私のパーソナルAIアシスタントだ。

2025年のAI革命は私たちの生活をがらりと変えた。それから15年。2040年の今現在では至る所にAIがいて、私たちの生活を支えている。「AIで仕事をする」はもはや古い。AI「と」仕事する――仲間のようにAIと協業するのが、2040年の当たり前だ。

私が勤めるスパイクスタジオは、その中心企業だ。

我が社のAI基盤サービス、通称「SPIKE ZUNO」はもはや社会のインフラと言って良い。日本を代表する多くの企業に導入され、その企業ならではの課題を解決し、業績の向上に役立っている。

私の仕事は、インテグレーションマネージャーとして我が社のAI基盤サービスを各企業に最適化すること。

「あれ、アルファ精機に行くには、ちょっと早くない?」

コーヒーを味わいながら、ふと時計を見ると、思ったよりも少し早い時間を指していた。

「燿子さん、一つ提案があります」

私の推しとそっくりの声で、<彼>は淀みなく告げた。「前回の訪問の際、燿子さんは同僚の青井さんに海沿いをドライブしたいと仰っていましたよね。今日はひとつ手前の駅で降りて、海岸線の旧道を抜ける自動運転のパノラマ・シャトルを予約しました。海抜の低いルートなので、より近くに海を感じられるはずです」

なるほど。アルファ精機は波ひとつない鏡のような海面が広がる海辺の地区にあり、海好きの私への、眠気も吹き飛ぶ「アガる」提案だ。

「採用!」私は叫んだ。「あ、そうだ、ついでに昨日の……」

「昨日のライブのセットリストも、走行中にスピーカーから流れるよう予約済みです」

<彼>は私よりもさらに軽やかに、そう言った。

【名札のない同僚】

【名札のない同僚】

潮風が髪を軽やかに靡かせる。遠くに点々と見える古い造船所のクレーンの影が、この美しい街にやってきたのだ、という実感を一層高めた。

アルファ精機本社一階の、海に面したカフェで私は同僚の青井遥(あおい・はるか)と落ち合った。

「おはよう、燿子」

入社時からずっと同じチームの青井は、今では阿吽の呼吸のパートナーだ。

「【潮富】のしらす丼、楽しみだね!」

まだ打ち合わせ前なのに、食いしん坊の青井はランチの話題を出した。

「ZUNO、今日の論点を出して」

青井が呼びかけると、二人の前に半透明のウィンドウがふわりと浮かび上がる。クライアントとのこれまでの打ち合わせ内容が、ひと目で俯瞰できる形に整理されていた。